2009年12月14日月曜日

天皇の政治利用

先日来、今日から訪日する習近平中華人民共和国副主席と天皇との会見を巡っての、鳩山内閣の「ルール破り」に関して、非難の声が上がり、挙げ句の果てに、宮内庁の長官がマスコミに対して不満をぶちまけるという考えられない事態となっている。
さらに、野党となった自民党からも鬼の首を取ったように鳩山内閣を攻撃する声が上がっているが、「政治利用するな」と言いながら政治責任を追及しようという姿勢には「?」をつけざるを得ない。

私自身は、次期国家主席への就任が確実といわれる習氏の初来日されるに関わらず、天皇との会見が行われないというほうが奇妙と言わざるを得ず、結果的に会見が設定されたことは高く評価したいと思う。
さらに、「1カ月ルール」については、「天皇の健康」という側面からすれば最大限尊重されるべきではあるが、たとえ直近の調整であってたとしても、体調や日程に問題がなければ構わないではないか、というのが自然な感覚ではなかろうか。
今回は、「1カ月ルール」というまさに「しゃくし定規」なルールのみを持ち出して、門前払いを食らわせた宮内庁は、それが仕事なのだろうけど、重ねて内閣からの要請があった時点で、考えを改めるべきであって、その結果についてぐずぐずと不満をぶちまけるというやり方はフェアではない。
もっと、違う議論があってしかるべきなのではないか。と思うのは私だけではないようで、週末の各紙には識者の皆さんのコメントが載っていた中で、唯一私が「なるほど」と思った、日本経済新聞(12月13日)の記事から「御厨貴;東京大学教授」の次のコメントを紹介したいと思います。

御厨貴;東京大学教授
友好親善のための天皇陛下の外国訪問や頻繁な外国要人との会見がすでに政治分野に入っているとも言え、「天皇の政治利用」とも考えられる。そうした状況がある以上、今回のケースの当事国が中国とはいえ「天皇の政治利用」を持ち出すのは論点がずれていると感じる。
「1カ月ルール」を前提とした主張が押し切られた段階で、宮内庁の羽毛田長官は何も言うべきではなかった。すべて政治が悪いとする手法には官僚の無責任を感じる。
「ルールはしゃくし定規」との理屈を前面に押し出し、会見を実現させた民主党政権側も、天皇陛下と外国要人との会見はどうあるべきかという本質から逃げたと言える。今回の議論を契機にいま一度、皇室のあり方を広く検討しようという気運が高まればいい。

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