2013年2月11日月曜日

誰か故郷を

今日、丸谷才一さんの本を読んでいて、とてもすばらしい文章に出会いました。

慶応大学の創始者である福沢諭吉が、故郷である大分県中津から母親を東京へ呼び寄せるため、迎えに行いいた際に、ふるさとである中津へ向けて送った『中津留別の書』という文章で、岩波文庫の中にも収められているそうです。

残念ながら、これまで全く知らない書物だったのですが、今は全文がネット上に公開されいるので、早速読んでみました。

文章としては、それほど長いものではなく、数分で読み切ることができます。

文章の中で、その大半を“人倫”について説き、続いて“学問”の勧めへとつながり、“国際化”の必要性を訴え、その大義のため故郷を去ることとなり、その“故郷”への惜別の辞として、次の文章を贈ります。

人誰か故郷を思わざらん、誰か旧人の幸福を祈らざる者あらん。

この一節は、どこかしらで耳にしたことのある文だと思うのですが、ここに初出があるとは知りませんでした。諭吉35歳のときです。

人が生まれ育った故郷を離れて、他の土地で暮らすというのは、相当に思い切った決断です。

かく言う私も、故郷を離れ30有余年、一人残っていた父が、こちらに移ってきてから、故郷との交渉もほぼ途絶えてしまい、とても寂しい思いをいたしておりました。

ところが縁あって、最近はふるさと舞鶴港関係の仕事をさせていただく機会を得ました。
おかげで、同郷の人たちとの仕事も多くなり、とても嬉しく思っています。

今の私にこう言う資格があるのかどうかは判りませんが、まさに“旧人の幸福を祈る”のみです。

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