2009年2月8日日曜日

Supercapitalism

昨年発売され、大きな反響を呼んだ「暴走する資本主義」という本を読みました。今週に入って夜眠る前に少しずつ読んでいたのですが、その内容はとても興味深いものであった。

原題は「Supercapitalism」、「超 資本主義」あるいは「行き過ぎた資本主義」という感じであろうか。

資本主義の対極にある共産主義が破綻し、資本主義=資本による統治が極端にまで進んだ現在の社会を、Supercapitalismとよんでいる。従来は民主主義という政治原理があって、現代の社会は民主主義に基づき運営されていると信じ込んでいた。
しかしながら本書では、資本力を有する者がその資本の力により、いともたやすく政治の世界を動かしていく様を的確にあぶり出していく。

例えばアメリカの政治社会で伝統的に力を持っているロビイストの存在である。日本にはこういった制度がないのであまりピンとはこないかもしれないが、いわゆる財界からの圧力などがこれに該当するのであろうか。
経団連などの財界の代表が国の諮問会議などで大きな発言力を持つようになり、小泉内閣ではその力を背景に行き過ぎた規制緩和が進み、現在の雇用不安を招いたことは記憶に新しい。

政治体制や社会習慣が日本とは大きく違うアメリカでの例であり、直接に日本に当てはまるとは思えないが、きっと近い将来目の当たりにする姿ではないだろうかと危惧される。

本書では、そのための処方箋も挙げているが、その中で一つ頷ける指摘として、「企業」を擬人化することをやめようという提案があった。

よく我々は企業があたかも一つの意志を持った存在であるかのように扱うことがある(例えば、企業による犯罪、品のない会社、などなど)が、これは明らかに間違いである。企業をそのように扱うと、あたかも企業自体がある種の義務や権利を持った存在であるかのように誤認してしまう。
企業が社会に対して何らかの権利を持っているなどと考えることは誤りである。その考え方を推し進めていくと、民主主義が資本主義に乗っ取られてしまうことになる。

そしてこのことから、法人税の廃止などへと論は進んでいくのであるが、この法人が権利主体とはなり得ないという考え方は非常に興味深い。確かに、そこの押さえを間違うと、とんでもない未来が待ち受けているような気がする。

昨年出版された経済書の中で、どこの書評をみてもトップ3に挙げられてるこの本は、その評判に違わず読み応えのあるおもしろい本でした。

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