2009年5月16日土曜日

わたぼうし

今日、「おかあさん ぼくが生まれてごめんなさい」という、とても刺激的なタイトルの本を読みました。
元々は、今から30年ほど前に出版された本ですが、さらに20数年の時を超え再出版されたものです。

内容は、奈良件の養護学校に勤める先生が、当時15歳で亡くなった少年について書かれたものです。
生まれたときから脳性麻痺でほとんど自由が利かない体でありながら、最後まで明るさと優しさを失わなかった様子が、ありありと伝わってくる名著です。

本のタイトルは、主人公の少年が亡くなる数ヶ月前に残した詩の一節ですが、その背景をかみしめながら読むと、胸がいっぱいになってくる素晴らしい詩です。

少年が亡くなった後、その当時の関係者や保護者の方々が中心となって、養護学校を修了した後の方々が、ともに集い励まし合う施設として構想された、たんぽぽの家は、今や大きな運動に広がっています。

「共生社会」「バリアフリー」ということが、ようやく普通の考えとして定着してきましたが、ほんの数年前までは、とてもそんな世の中ではなかった、ということを改めて思い返しました。

最後に、その詩の全文を掲載します。

「ごめんなさいね おかあさん」

ごめんなさいね おかあさん
ごめんなさいね おかあさん
ぼくが生まれて ごめんなさい
ぼくを背負う かあさんの
細いうなじに ぼくはいう
ぼくさえ 生まれなかったら
かあさんの しらがもなかったろうね
大きくなった このぼくを
背負って 歩く悲しさも
「かたわな子だね」とふりかえる
つねたい視線に 泣くことも
ぼくさえ 生まれなかったら

ありがとう おかあさん
ありがとう おかあさん
おかあさんが いるかぎり
ぼくは生きていくのです
脳性マヒを 生きていく
やさしさこそが 大切で
悲しさこそが 美しい
そんな 人の生き方を
教えてくれた おかあさん
おかあさん
あなたがそこに いるかぎり



そして、その息子さんの詩に対する、お母さんの返歌がこれです。
これもまた素晴らしい。

私の息子よ ゆるしてね
わたしのむすこよ ゆるしてね
このかあさんを ゆるしておくれ
お前が 脳性マヒと知ったとき
ああごめんなさいと 泣きました
いっぱいいっぱい 泣きました
いつまでたっても 歩けない
お前を背負って歩くとき
肩にくいこむ重さより
「歩きたかろうね」と 母心
“重くはない”と聞いている
あなたの心が せつなくて
わたしの息子よ ありがとう
ありがとう 息子よ
あなたのすがたを見守って
お母さんは 生きていく
悲しいまでの がんばりと
人をいたわるほほえみの
その笑顔で 生きている
脳性マヒの わが息子
そこに あなたがいるかぎり

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